積極的な情報提供で自費率を高める方法

1.自費率向上の考え方と移行ポイント

歯科医院の収入向上対策としては、大きくは患者数アップ、つまり新規患者の確保を目的とするものと、自費率向上により診療単価のアップを図るものに分けられます。
今回は、自費率向上による増収対策について進めていきます。

1.自費率向上の考え方

自費診療は、「患者にとって最良の治療を提供することである」ということをしっかりと理解してもらうためにも、治療技術の向上、医療サービスの充実を図るとともに、自費治療に関する情報提供の量と質を増やし、患者の選択肢を広げることが重要です。
このことが結果として、医院の増収へつながります。

自費率向上の考え方

自費率向上の3要素は、(1)数(新規・既存患者へのアプローチ件数)、(2)自費診療の移行 率(情報提供)、(3)自費単価(医療サービスの充実による単価の引き上げ)です。
この3要素への取組みが自費率向上につながります。

2.自費診療への移行を高めるポイント

(1)カウンセリング実施による自費率アップ

診療の流れを、従来の保険診療のシステムと対比し、患者に十分な情報を提供することが、自費診療への移行率を高めるポイントになります。

(1) 自費診療を患者に勧めるのではなく、「自費と保険の違い」を明確にする

自費と保険の違いが分からない患者は、通常の説明を聞いているだけで、自費を強引に勧められている(=金儲け主義の医院)と受け取りがちです。

(2) 「自費と保険の違い」を説明するためのカウンセリングを実施する

患者には、「自費と保険の違い」を分かりやすく説明するとよいでしょう。
患者の知識を高め、選択は患者に任せましょう。
カウンセリングは対等の立場で行います(チェアサイドを離れ心理的不安を取り除く、同じ視線の高さで話す)。

保険診療と自費診療の比較ポイント

(3) カウンセリング、マニュアルの整備

効率的にカウンセリングを行うために、ビジュアル化されたツール類を使います。

(4) カウンセリング・トークの整備

複数のドクターがいる場合や、カウンセリングをスタッフに移管する場合は、標準的なカウンセリングの説明ができるようにトーク・マニュアルを整備します。

(5) 自費に関するデータ管理

実施策の効果測定は自費診療収入で見るのでなく、自費診療移行率によって判定します。

(2)歯科医療に対する意識変革を促す

普段接している患者の考えていることを知り、歯科医療に対する意識の変革を促すことにより自費率アップをはかります。
歯科医院に患者が希望することとしては、「夜間診療」「保険範囲の拡大」「待ち時間の短 縮」「診療回数の短縮」「治療内容の説明」などがあります。
その中でも特に3つの要望が強くなってきています。

主な3つの患者側の要望
どうして患者がそのように考えるのかを理解しておかないと歯科医療に対する意識変革を促すのは難しいと思われます。
人間の価値観というのはそれまでに得た情報や経験によって形づくられるといわれているので、患者はそれだけ歯に対する情報をもっていないという事がわかります。
よって、これからの歯科医療従事者に求められる役割は、適切な情報を伝える事で、これにより、歯に対する価値観を高めます。

(3)患者教育により医院を発展させる

(1) コンタクトポイントを意識した患者教育

成功している医院は、患者にどの情報をどう伝えるか、それによって患者の価値観をどう変えていけるかを考えて取組み方法をスタッフと共有しています。
患者を教育することこそが、結果的には歯科医院の発展につながりますので、治療開始からメンテナンスへの移行までの段階での接点(コンタクトポイント)でいかに患者教育を実施するかがポイントです。

スマートフォンサイトの特徴

(2) 患者教育の原則

自分自身の歯に対する価値観以上に、患者の歯に対する価値観を高めることはできませんので、常日頃からスタッフと話をし、デンタルIQの高める努力は必要です。
その際に気を付けないといけないのは、医院の収益だけがクローズアップされてスタッフに伝わっていくことがないようにすることです。
インプラントの「価格」と「価値」を天秤に掛けた場合、スタッフ自身がインプラントの価値を認めていないと積極的には患者には進められず、当然、価値も伝わりません。
もし、インプラントは良いものだが、そこまでの価値は感じられないといった際には、その スタッフは、歯や歯科医療に関する知識・経験が圧倒的に不足していると考えられますので、まずは、スタッフに対するデンタルIQの啓蒙というところからスタートしなければなりません。

2.積極的な情報提供による自費率向上

短期間で収益を上げるためには、その医院のスタッフのデンタルIQを高めるところから始めます。
スタッフが、「本当に歯が大切である」とか「自分達の仕事は社会的意義のある仕事である」と感じると自然に情報提供したくなります。
ツールやシナリオ、分かりやすい資料・写真だけでなく、何よりスタッフ自身がどういった気持ちで勧めていくかが非常に大切です。

1.ビジョンイメージング法による情報提供事例

ビジョンイメージング法とは、患者に対して、単に長々と説明するのではなく、頭の中で目に浮かぶような具体的なイメージを長期的にもたせてあげるという方法です。

実際の活用方法 インプラントの場合
価値観の低い方というのは物事を短い時間軸で考えるといわれています。
指導する側(スタッフ)が指導される側(患者)に対して、どれだけ長期的なイメージを持たせてあげられるかが非常に重要となります。

2.残存指数と自立割合の関係

歯科業界でいう「8020」運動がありますが、どうして80歳で20本の歯を残さないといけないのかという事を理解していないのは、患者だけでなくスタッフにも多いのです。

歯と自立の関係
要介護になると、経済的な負担はもちろんですが、美味しいものを美味しく食べられないことや家族の負担を考えると口腔内の状態をきちんとしておくことに価値があると説明すると良いでしょう。

歯と自立の関係

3.保険診療と自費診療の違い

保険診療と自費診療の枠組みの違いというのをスタッフ自身が理解していない場合があり、当然患者も理解していません。
日本の健康保険制度は諸外国に比べると非常に優れています。
ただ、内科・外科といったような医科と歯科では少し事情が違って、歯科は口の中を全て治療しようとすると保険が認められている範囲は非常に狭くなっています。
今の最先端の治療、身体に優しい材料や永年使用しても着色しづらいものや良く噛めるといったものを使用するとなるとどうしても自費診療になってしまうことを伝えなくてはなりません。
そして自費診療が良くて保険診療が悪いということではなくて、全ての情報を提供した上で、患者自身が納得して、今後の治療を進めたいということを伝えます。
自費診療の提案というのは伝え方を間違えるとあの医院は高いものを勧めるなどと悪評として伝わる場合があります。
保険診療と自費診療の違いについては、資料を使ってそれぞれのメリット・デメリットを提供することにより、患者の納得性は高まります。

保険診療と自費診療の違いについて、正しい情報を伝えることが重要

4.固定観念の払拭

実際に情報提供していく中で、スタッフの固定観念がスムーズな情報提供を妨げていることがあります。

年収と自費診療割合、自費率と患者数、患者単価の関係
実際の治療現場では、98人目ぐらいまでは自費診療を勧めても保険診療でと言われる可能性が高いですので、スタッフには充分その旨を説明しておかなければ10~20人ぐらいに説明して結果がでないとあきらめてしまいます。
基本的に患者は、保険診療選択が前提になるものと伝えておくのも良いでしょう。
なぜ年収が低くても自費診療を望むのかは、人によって色々な価値観があり時間やお金をかける割合が違うからです。

5.情報提供する際の心がけ

情報提供する際に心がけなくてはいけないことは以下の点です。

情報提供する際の心がけ

3.効果的な説明をするための9つのステップ

医院内でカウンセリングや情報提供を行っていく際、患者のデンタルIQを効果的に高めることができている医院とスタッフには話(説明)に共通性があります。

1.9つのステップ

効果的に情報提供を行っていくには、9つのステップを踏むと効果的です。
以下に各ステップについて解説します。

9つのステップ

2.内部に向けた増患対策 (内部プロモーション)

勝ち組医院は、紹介の重要性を認識し、「最低限必須項目」は当り前に行い、この項目では患者満足は得られず、「重要項目」が信頼関係構築を図り、満足度を高め、患者紹介につながる前提と捉え、活動しています。
満足度を与え、他医院に無い特徴(専門性やこだわり)を持ち、増患の為の仕掛け(患者クラブや講習会等)を企画実行しています。

患者満足度UPの重要項目と最低限必須項目の実施(口コミ・紹介につながる項目)

4.情報提供ツール作成事例

どのようなツールが患者にとって分かりやすくて、最終的に自費診療を受けることにしたのかは様々な要素があります。
そのツールとしては、見やすい写真が載っているのがポイントの「リーフレット」、「アニメーションソフト」、「症例集(治療のビフォーアフターや患者の声が載っているもの)」、「模型」などがあります。
院長やスタッフの思い込みでツール等を決めてしまうのではなく、色々なものを作成し活用してください。

1.自由診療提案までのステップ

自由診療の提案には心理的3つのステップがあります。
最初に医院に対する信頼感を持ってもらい、次に、患者自身からの願望・要望を聞き、良い治療を受けたいと思わせ、最後に提案をします。

自由診療提案までのステップ

2.情報提供ツールの作成事例

(1)院内パンフレット・リーフレット

院長の人となり、自院の診療方針や特徴、患者に対して何ができるかなど、必ず自院の情報提供をすることが重要です。
広告規制を受けませんので、専門性や得意分野等患者側が欲する情報を掲載します。院内パンフレッ

ト・リーフレット

(2)自由診療アルバム

自由診療アルバム

(3)アニメ解説ソフト

アニメ解説ソフト

この記事をPDFファイルでダウンロードする