最速で課題を解決する逆算思考 中尾 隆一郎 著

はじめに

著者の中尾隆一郎氏は、リクルートグループで29年間、会社経営、事業経営、事業監査など様々な職種と業界を経験されたが、はじめてのテーマに対して、どのように取り組めば良いのかという仕事の「勘所」が分かっていたからです。
この「勘所」こそ、この本で紹介する3つの考え方なのです。
1つ目は、この本のサブタイトルにしたGOAL DRIVEN、つまりゴールから逆算すること。
2つ目は、重要な仕事に絞ること。3つ目は、「広げて、閉じる」という考え方です。

第1章 まずはゴールを考える

あなたが最高のゴールを目指して仕事をしているのか確認してみましょう。
「最高のゴール」だとハードルが高いのであれば、重要な仕事をしているか確認してみましょう。
その方法は、①主要業務、②周辺業務、③手持ち業務の3つに分類して、①②③の合計時間と割合を計算します。
①の主要業務が75%以下の人は仕事の中身を見直す必要があります。
①の主要業務の中で、あなたが最も重要な仕事だと思っているものを選び、その仕事のゴールを確認します。

生産性は一般的にROI(Return On Investment)という分数で表現します。時間やお金といったInvestme Nt(投資)を分母に、そして売上などのReturn(成果)を分子とした分数で表現するのです。
生産性が高いとは、この分数の値が大きいということです。

ROIの値を大きくするには、3つの方法があります。
A 分母を小さくする
B 分子を大きくする
C AとBを同時に行う

一生懸命なのに生産性が低い人は、ROIのIが大きいことが多い
①チームワークの美名のもと、長時間労働を強いる同調圧力がある。
②長時間労働に起因するインプット不足が当たり前
③他人と同じ、前例踏襲が無難な風土がある

何をすればよいか分からなくて生産性が低い人
①上司もどうして良いか分からない
②直接目に見えないものを想像する力が不足している
③自分で答えを見つけることができない

逆算思考とは
1⃣そもそも解くべき課題なのかを考え、取捨選択する
2⃣ゴールを明確化する
3⃣ゴールから逆算して考える
4⃣関係者と全体像・タスクを共有する
5⃣実行する
6⃣振り返る

第2章 論点を明確にする

「問題」は、現在起きている「良くないこと」「気になること」「モヤモヤしていること」を指します。
「課題」は、「将来に到達したいゴール」あるいは、「To Be(あるべき姿)」と「現状このまま進捗した場合に到達できるだろう現状予測」とのギャップです。
つまり、「問題」は、現在のことで、「課題」は未来に起こるであろうギャップということ。

「課題」は解決すべきだけれども、「問題」は解決せずに放置してよいケースがあるのがポイント。

ピラミッド構造の論点ツリー
大論点 → 論点 → 仮説 → 作業
ここで大論点を論点に分解する時、あるいは論点をサブ論点に分解する時には、MECEにします。
MECEとは、Mutually,Exclusive,Collective,Exhausiveの略。漏れ、抜け、ダブりがない状態のこと。

論点を具立的に分解するのによいのは、因数分解です。
因数分解は、数や文字式を細かく分解し、独立した因数の掛け算にすることです。
それぞれの因数が独立していることがポイントです。
その際、できるだけ広げることを意識しましょう。

論点の優先順位を決めて、順位の高いものから実施していきます。
最大インパクトのある論点から解決していけばよいのですが、実際の場面では「それではうまくいかないケースも多い」という実体験です。
理由は、2つあります。
①そもそも最大インパクトがある論点を解決するのは難しい。
②最大インパクトの論点に対しては、今まで誰かが解決しようとしていたケースが多い。
ではどうすれば良いのでしょうか。
実は短期間に成果が出る(相対的に簡単な)論点を解決することから始めるのです。
簡単なので当然ですが、短期間に成果が出ます。
するとプロジェクトメンバーは、「自分たちはできるのだ!」と自信を持ちます。

第3章 仮説を検証してアクションにつなげる

良い仮説の6つの条件
①間違っていても構わないが、検証もしくは反証できる
②「なぜ、そう思うのか」の理由が明示されている。
③検証する方法を考えることで、具体的な作業が見えてくるように設定されている
④検証の結果、次の新しい論点、それに対する仮設が見つかる
⑤進化する:最終的に「だから、何々をしましょう」といった具体的なアクションにつながる
⑥大論点に回答できる:検証結果をつなぎ合わせると、大論点に答えるストーリーになる

プロジェクトマネジメント能力は、マネージャーの重要必須スキルです。具体的には、プロジェクトマネジメント(PM)とピープルエンパワーメント(PE)2つのスキルが求められます。

具体的な検証作業に使うのが、プロジェクトマネジメントの基礎を体系的にまとめたPMBOK(ピンボツク)の10のステップです。
発足と目標の明確化
①目標を明確にする
計画
②作業を分解する
③役割分担し、所要期間を見積もる
④作業の依存関係を調べクリティカルパスを見つける
⑤スケジュールを作る
⑥負荷をならす
⑦予算を作る
⑧リスクに備える
実行とコントロール
⑨進捗を管理する
まとめ
⑩事後の見直しをする

どのような見積りを作ろうと、所要時間はすべて使われてしまうのです。
これをパーキンソンの法則と言います。
「予算も所要時間もすべて使われるまで膨張する」というものです。

第4章 生産性を高めるプロセスの広げ方・閉じ方

最速で課題を解決する逆算思考
この表の中から参考になったものを一部抜粋します。

③納期を無視する
つまり無視することを考えてみます。
極端なケースですが、もしD(納期)をズラすことができれば、何をしたいですか?
何をすれば良いですか?
このようなことを考えるわけです。
逆は?D(納期)を短くするわけです。

④経営者の立場で
経営者以外の方は、ぜひ「経営者の立場」で考えてみてください。
経営者といっても1つは、「自社の経営者の立場」、もう1つは、「取引先の経営者の立場」ということです。
さらには、ポジションを1つ下げて、「役員の眼鏡」や「部長の眼鏡」など順々にかける眼鏡を変えるのもよいです。

⑤ビジネスプロセス
自社のビジネスのプロセス(流れ、矢羽)で表したものをビジネスプロセスと呼びます。
「創って⇒作って⇒売る」というプロセスです。
「創る」は、研究開発をして、試作品を作って、商品化するなどのプロセスを統合して表現しています。
「作る」は、商品を実際に製造するプロセスです。ここは作る商品によりプロセスは多岐にわたります。
そして、「売る」は、ターゲティングして、ヒヤリングして、プレゼンテーションして、クロージングして、納品して、売上を回収して、アフタフォローするプロセスです。
どのプロセスを自社で保有し、競合企業との差異化にするのか検討します。
同業の競合企業の視点で自社をチェックしてみましょう。
その会社(自社)の差別化ポイントが1つだけだとすると、模倣しやすいのが分かるでしょう。
自社のサービスをビジネスプロセスに分解して、どこが強みで、どこが弱みなのかという現状把握から始めてみましょう。

第5章 様々な事例から学ぶ

世界最高のGoogleに学ぶ
①仕事に意味を持たせる
②人を信用する
③自分より優秀な人だけを採用する
④発展的な対話とパフォーマンスのマネジメントを混同しない
⑤2つのテール(トップとボトム)に注目する
⑥カネを使うべき時は惜しみなく使う
⑦報酬は不公平に払う ←誤植でないです。
⑧ナッジ きっかけ作り(小さなシグナルが行動を変える)
⑨高まる期待をマネジメントする
⑩楽しもう(そして①に戻って繰り返し)

⑦の「報酬は不公平に払う」です。
「公平」ではなく、「不公平」なのです。
最終的にこの不公平を選択するかどうかは別です。
世界最高の採用をしている会社は、「不公平」にしているということを知っているか、知らないかが重要なのです。

おわりに
著者が3冊同時に執筆されたことを、因数分解されて具体的にどうされたのか書かれています。
これも参考になります。

この本を選んだのは、著者の中尾隆一郎さんの個人的にファンだからです。
以前にも紹介した「最高の結果を出すKPIマネジメント」も良書でした。
さらに、本書は、リクルートの強み・仕事の進め方を可視化できるようにこのような著書にまとめてくださっています。
本書も3つの勘所を具体的な事例も交えて明らかにしてくださっています。
このサマリーを読まれて興味を持たれたら是非とも、ご一読頂きたい、何度もスタッフと一緒に読んで実践してもらいたいと思う本です。

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(桐元 久佳)