【新書版】孫社長にたたきこまれた「数値化」仕事術 三木 雄信 著 

【新書版】孫社長にたたきこまれた「数値化」仕事術 三木 雄信 著

はじめに–数字が「最大の味方」に変わる仕事術

・マイクロソフトとのジョイントベンチャーで中古車情報サービスを扱う「カーポイント」の立ち上げ
・米国のナスダック市場と連携して証券取引所の「ナスダック・ジャパン」を開設
・日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)の買収
・ADSL事業「Yahoo!BB」の立ち上げ
などの大型案件に携われました。

 

第1章 なぜ「数値化」すると生産性が劇的にアップするのか –数値化仕事術のメリットと七つの基本

数値化する大きなメリットの一つは、「目標達成までに何をすべきか」という具体的なアクションが見えてくることです。
つまり、数値化することで、初めて人は動き出せるのです。
同時に、数値化にはモチベーションを高める効果もあります。
ダイエット中も、毎日体重を測定して記録するだけで、「目標まであと3キロだから頑張ろう!」と思えるもの。
数値化すれば、ゴールまでの達成度や自分が努力した結果が目に見えてわかるので、さらにやる気がアップします。

問題を数値化すれば、次にとるべきアクションが具体化し、解決に向けて動き出せます。
問題を数字に置き換えれば、現状を正しく把握し、問題の根本的な要因を明確にできるからです。
どれほど困難に思える問題も、数値化すれば解決の糸口がつかめます。

ソフトバンクは創業以来、新たな分野に次々と進出してきました。
経験もノウハウもない未知の分野に乗り出すのですから、当然あらゆる問題が発生します。
それでも急成長を続けてこられたのは、孫社長と社員たちが「問題の数値化」という技術を駆使して、他社の何倍、何十倍もスピーディーに解決してきたからにほかなりません。

孫社長は、人の意見やアイディアを「良い悪い」「好き嫌い」などの主観では判断しません。
「これなら結果が出る」と数字で客観的に示せるならOK、示せないなら却下するまでです。

数値化仕事術を実践するための7つのポイント

1)数字は、「与えられるもの」ではなく、自分で「取りにいくもの」
2)数値化の目的は、「どうだったか」ではなく「どうするか」
3)数値化のファーストステップは「分ける」。
数える前にまず分けろ! 分けなければ、必要な数字を計測することもできません。
「数える前に、分けろ」これが数値化仕事術の鉄則です。
「プロセスで分ける」のも、問題解決につながる有効な手段です。
4)問題のありかが見えてきたら、さらに細かく分けて計測してみる
5)数値化のゴールは、現実の問題を「数式で表す」こと
6)数値化したら、あとはPDCAを高速で回し続ける
7)問題解決後も数字でチェックを続け、環境変化にいち早く気づく

 

第2章 問題解決に絶対役立つ「データ分析・七つ道具」 –統計知識も高度なエクセルスキルも一切不要
1)プロセス分析

①プロセスに分けて、歩留まりを計測する
②歩留まりから「問題のありか」を突き止める
③解決策の仮説を立て、中間目標を設定する
④仮説を実行し、結果を数字で検証する

2)散布図と単回帰分析

①エクセルを使って短回帰分析の直線を引く
②「近似曲線」が適切か確認する
③予測値を出し、次にとるべきアクションを決める

3)重回帰分析

実際のビジネスでは、売上にせよ利益にせよ、関わってくるのは一つの要素だけとは限りません。
多くの場合、複数の要素が関わりあって、最終的な売上や利益が決まるものです。
そんな時、各要素の相関関係を明らかにするのに役立つのが「重回帰分析」です。
⓪アドインを有効にして「データ分析」を表示させる
①エクセルにデータを入力する
②各項目の相関関係を算出する
③算出された数値の「当てはまり具合」を検証する
④重回帰分析の式で、適正かどうかをチェックする

4)パレート図分析

「優先的に解決すべき問題」が一目瞭然となる
①種類を分ける
②エクセルで簡易版のパレート図を作成する
③パレート図を分析し、優先順位をつける
もしあなたがたくさんの問題を抱えて、「何から手をつけるべきか」と迷う場面があったら、パレート図を作ってみることをお勧めします。

5)T勘定

簿記の場合は、「お金や資産の数量」を管理しますが、これを仕事に活用する場合は「作業の数量」「書類の数量」「在庫の数量」などを管理できるということです。
①今日の「入り」と「出」の数を記録する
②プロセスごとに毎日の在庫数を記録する
③ボトルネックを突き止め、改善策を実行する

6)差異分析

差異分析とは、「計画」と「実績」を比較し、差異が生じた原因を分析する手法です。

7)LTV分析

 

第3章 よくある「間違った数値化」と気をつけたい三つのワナ –数値化しているのにうまくいかないのはなぜか?
1)数字の単位、定義、解釈が曖昧

孫社長は、曖昧な数字を絶対に見逃しません。
特に怒られるのが、「分母と分子がはっきりしないパーセンテージ」です。
数字の定義が曖昧だと、人によってその意味を勝手に解釈することになってしまいます。

2)「分け方」が甘い、あるいは不適切

「継続的な数字」と「一時的な数字」を分けることです。

3)計測している数字がゴールと結びついていない

数値化で重要なのは、「ゴールから逆算して、何を計測すべきか判断すること」です。
「これは何のゴール(目標)のために集める数字なのか」を上司に確認し、目指す地点を明らかにしてから、何がゴールにつながる数字なのかを自分で考え、適切な場所へ取りにいく。
それをやろうとする意志を持つ人しか、数値化を問題解決に役立てることはできません。

4)数字の「マンネリ化」

次のアクションに結びつかない数字をいくら眺めていても、何も改善しません。
数値化の手法や基準はずっと固定せず、その時々の状況に応じて、必要な数字を取りにいかなくてはいけないのです。

5)数字の「内向き化」
6)LANばかりでDO(実行)していない

未来のことなんて「やってみなけりゃわかならい」のです。
ソフトバンクが驚異的なスピードで成長を続けてこられたのも、のちかく「DO」することで、数値化の精度をどんどん高めてきたからです。
「DO」するからこそ、その後に精度の高い「PLAN」ができる。

7)相反する二つの数字を同時に達成しようとしている

ビジネスには「両立させるのが難しい数字」が存在します。「売上」と「信用」は、その一例です。必要なのは、組織のトップが「今はこちらの数字を優先する」ときめることです。
どの数値を優先するかを正しく判断できるのは、どうしても全体の数字を見られる立場の人間に限られます。
新規事業の立ち上げ期は、「売上」が最優先です。
ある程度の売上実績ができて、市場環境や顧客のニーズがつかめてきたら、次は「代理店の質」の優先度を上げます。

相反する2つの数字に悩んだら、タイミングをずらしながら優先順位を入れ替えていくのが、最も現実的な問題解決法です。
数値化のワナ1)「累積」のマジック
「累積は実態を覆い隠し、問題を内包する」といってもいい。
累積にはうまくいっていた時の数字やその場しのぎの数字も含まれているという落とし穴があります。
数値化のワナ2)「平均値」のマジック

平均値を出すことで何となく全体を把握できた気になってしまうのが「平均値のマジック」の怖さです。
「ゴールなき平均値は真実を覆い隠す」ということを、知っておきましょう。
数値化のワナ3)「配賦」のマジック

 

第4章 「数字に強い人」は知っている理論・法則

–知るだけで仕事の成果が大きく変わる!

1)大数の法則と期待値

トライアルの回数を増やせば増やすほど、その物事が実際に起こる確率は理論値に近づいていくというものが大数の法則です。

2)鮭の卵理論

「数うちゃ当たる」をいかに低コストでやりつづけるか

3)72の法則

複利のパワーは絶対に味方につけるべし、年平均の成長率は、「単利」ではなく「複利」で効いてくるからです。現代の資本主義社会は、福利の理論で回っています。
単年度でプラスになるだけでなく、毎年成長を続けて資本を大きくし、複利の効果でどんどん会社全体を膨張させていく。
このように、何ごとも複利で発想するのがグローバルスタンダードなのです。

4)限界効用逓減の法則

「量が増えるごとに、一単位あたりの効用(限界効用)は次第に減っていく(逓減)」という法則です。経済とは、「何らかの投資に対して効用を得る活動」です。
ところが、投資の量を増やした結果、一単位の投資あたりの効用が下がってしまうことが多々あります。

5)ダンバー数

数を増やして一定水準を超えると、効用はむしろ-に転じるという「規模の不経済」が働く場合もあります。英国の人類学者であるロビン・ダンバー氏が提唱した仮設「安定した集団を維持できる個体数には上限がある」。
人間の場合、安定した人間関係を保てる限界は、「平均で150人(100人から230人の間)」としています。
「ベンチャー企業の300人限界説」とは人数に多少のズレはありますが、「集団の上限値」が存在するのは間違いないと考えていいでしょう。

6)マジックナンバー7

アメリカの認知心理学者であるジョージ・ミラー氏が提唱したもので「人間が短期的に記憶できる容量は七個前後」という法則です。

7)イノベーター理論とキャズム理論

イノベーター理論は、スタンフォード大学の社会学者であるエベレット・ロジャース氏が提唱した理論で、商品購入の態度によって消費者を5つのグループに分類しています。
これに対して米国のマーケティングコンサルタントのジェフリー・ムーア氏は、「アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には、容易に超えられない深く大きな溝(キャズム)があると示しました。

 

第5章 究極の数値化仕事術・ソフトバンクの「3次元経営モデル」 –どんなビジネスにも応用できて効果抜群!

ソフトバンクの経営に数値化仕事術はどう活かされているのか、ソフトバンクの経営の基本にあるのは次の5つの要素です。
①顧客数、②顧客単価、③残存期間(顧客でいてくれる期間)、④顧客獲得コスト、⑤顧客維持コスト
このうち、①~③を最大化し、④と⑤を最小化すれば会社の利益は最大化します。
ソフトバンクは常にこの5つの数字を上げたり、下げたりしながら、経営を行っているのです。
第1段階:顧客数を増やす
第2段階:顧客単価を上げる
第3段階:顧客獲得コストと顧客維持コストを下げる
第4段階:残存期間を延ばす

新書版特別章 「数字を使える組織づくり」三つのポイント –数字に使われるな! 数字を使いこなせ!

1)「DIKW」に分けて考えさせる

Data:数値
Information:どうだったか?
Knowledge:どうなるか?
Wisdom:どうするべきか?
「その数字がどのような意味を持つのか」という解釈をDataに付加すると、Informationになります。
Informationは、現状把握に役立つ情報であるのに対し、「これからどうなるか」の示唆を含んだものがKnowledgeです。
更に「では、どうすべきか」まで考えて導き出された答えが、情報として最も付加価値の高いWisdomです。

2)プロセス思考で考えさせる

大事なのは「数値化に必要なプロセス分けは自分で考える」という感覚です。
さまざまなツールでプロセスごとの数値化が自動で行われる今こそ、与えられた区分を無条件で受け入れる思考停止には、十分に注意したいものです。

3)スループットとボトルネックを意識させる

 

おわりに–コロナで事業環境が激変した今こそ、数値化仕事術が役立つ!

孫社長の「一人で見る夢はただの夢、みんなで共有できる夢は志」

環境が変われば、既存事業も「新規事業」と同じなのです。
であれば、当然、数字の取り方もこれまでと同じでいいわけがありません。
新しい事業のあり方を考えていく中で、数値化のやり方を全般的に見直す必要がでてくることもあるでしょう。

 

今月はこの本を選んだのは、ソフトバンクや孫さんの仕事術を学びたかったからです。
20年ほど前読んだ記事ですが、ADSLを普及させる際に、孫さんは、チャネル別の顧客獲得コストと1件平均の売上見込みを説明されていてそんな細かいことまで把握されているのかと驚いた記憶があったからです。
著者の三木さんは、その普及の現場で孫社長と仕事された方ということで、本書を読ませて頂きました。
具体的な事例や手法・ツールがたくさん紹介されています。
ぜひ一読されて一つでも真似されれば、きっと業績が上がると思います。
お勧め度:☆☆☆☆ 星4つ
(桐元 久佳)

【新書版】孫社長にたたきこまれた「数値化」仕事術 三木 雄信 著