日本永代蔵…井原西鶴 著

そもそも、何故?今時、この日本永代蔵を紹介しようと思ったのか。
それは、ギリシャの財政破綻問題や東京オリンピックに向けた好景気と株価上昇という局面ですが・・・業績が改善している企業もあれば、そうでない企業もある。
つまり、社会としての景気はあるけれども、企業の業績は自社の工夫次第です。
では、どうやって工夫すればいいのか・・・と考えている時に、日本発の経済小説と言われている本書を読んで、経営とは何か考えるきっかけにでもなればと思って読んだからです。
なにせ本書の副題は、「大福新長者教」ですからね。

本書は、現代語訳・原文・脚注の解説がしっかりしているので、古典が苦手という方でも楽しめます。
実際、私、桐元も古典は苦手ですが、、、十分楽しめました。

現代にも通じる経営の要諦や財産の蓄え方、失い方など豊富な事例が掲載されております。
というより、江戸時代から現代まで、財を為す方法の本質は変わっていないと思えます。
実際の商いは、別としても。

数ある話の中で私のお気に入りは、巻三「煎じよう常とはかはる問薬」です。

長者丸(ちょうじゃがん)という金持ちになる可能性のある妙薬です。
早起き5 両、家業 20両、夜業(よなべ)8両、倹約 10両、達者 7両
これを朝晩飲み込んだらいいのだとか。

これに加えた大事なことは、なによりも毒断(どくだち・服薬の妨げとなる飲食をさけること)らしく・・・その毒とは
美食と好色
絹物を普段着にすること
女房・娘に贅沢をさせること
息子に鼓や太鼓などの種々の遊芸を習わせること
蹴鞠(けまり)・楊弓(ようきゅう)・香会(こうかい)・連歌・俳諧に耽ること
花見・舟遊び・昼風呂入り
夜歩き・博奕・碁・双六
町人に無用な居合・剣術
諸事の仲裁と保証の判をおすこと
月八厘より高い利息の借金等
など他にも例は上がっておりますが、これらに注意するように心がけなさいというマクラがあってから本題の到富(ちふ)談に入るのですが。

元手なしでできる仕事はあまりないが、何とかして 元手なしで儲かる仕事はないものかと気をつけて、 苦心していたとこと・・・あちこちの武家屋敷に行って仕事を終えた大工や屋根葺き職人が、帰っていく と、檜の木の切れっ端が落ちたまま捨てられているのでした。
その木切れを集めて売ったところが、250文の儲けとなり、毎日、夕暮れを待ちかね、大工達の帰りを見合わせて拾い集めたそうだ。
雨の降る日は、この木屑で箸をけずって売るなどし、後に木切れが大木となり、材木屋を営んで、一流の材木屋になったそうだ。

日本永代蔵…井原西鶴 著現在でも原材料を簡単に捨てずに、手間をかけているお客様がいらっしゃいます。
同業他社よりも原価率は低いので、利益を上げてはります。

工夫次第で一儲けできるのは、江戸時代も現代も 同じです。
井原西鶴の軽妙な文体も面白いので、 一度読んでみてくださいませ。

お勧め度:★★★☆☆星3つ
(桐元 久佳)