はじめに
マーケティングとは、商品を売るための広告や調査手法だと思われているが、それは表層的な理解だ。
その本質を捉えて再定義すると、マーケティングとは、「必要な価値を、必要な人に届け、必要な変化を起こす仕組みづくり」のことである。
たとえば、100人の組織内で変化を起こそうとした時――、マーケティング思考を持っているリーダーは、頑張らない。なぜなら100人のうち、大多数の約80人は「変化することが、必要」と頭で理解できても、「変化しないほうが、楽」。
だから、何度も説得が繰り返されれば、逆に「変わるもんか!」という反応を、生むことになる。
100人の組織であれば、そうした協力者が、6人は現れる。そのメンバーだけで、小さな変化を、素早く、起こし始める。
すると、その変化を見て、周りから二人、三人と協力するメンバーが、さらに集まってくる。そうした協力者が12人を超えたところで、突然、この変化の価値は組織内で認識され、その後、一気に30人、50人へと浸透していくのである。
「必要な価値を、必要な人に届ける」というマーケティングを正しく実践することで、既存体制や既得権益に寄りかかることなく、自らの意志で、自らの収入を創りだせるようになった。
つまり、マーケティングは、民主化を果たしたのだ!
探究学習によって創発された学生のアイデアに、企業の専門家が技術や知識を提供・支援することにより、あらゆる社会課題を突破できるのだ。
ならば、「探究世代の人材(必要な価値)」を「企業の技術や知識(必要な人)」に届け、「新規事業を多数創出する仕組み(必要な変化)」をつくるのは、マーケッターにとっては、日常業務の範疇なのである。
■変革加速ツールとしてのマーケティング技術35
1 逆転ポジショニング
2 上映会マーケティング
3 VIPプライス
4 ザ・モデル
5 法人シフト戦略
6 コネクテッド戦略
7 診断マーケティング
8 ロングテール戦略
9 オンライン学習
10 センターピン集中戦略
11 子供商品開発プロジェクト
12 パワーコンセプト
13 実証実験(POC)
14 ペインの解消(損失回避性)
15 NSI(ないと死んじゃうインデックス)
16 カスタマージャーニー
17 ファシリテーション技術
18 グーグルデータポータル――ダッシュボード
19 ビッグクエリML――モデリングツール
20 ビジネスモデルキャンバス
21 ビジネスモデル・クイック診断
22 未来地図(もしくは未来予想図)
23 祭り
24 顧客の声(VOC)
25 ハードサイド/ソフトサイド
26 OKR
27 デイリースクラム
28 垂直思考vs.水平思考
29 逆算思考
30 リードマグネットとしての「〇〇〇講座」
31 NFT
32 インサイトファインダー
33 肩書き進化方
34 二人組の法則
35 リレープレゼン
序章
第4次産業革命とは――AI(人工知能)やIOT(モノのインターネット)などにより、人が機械を操作しなくても、機械自らの判断により生産活動を行うようになる技術革新のことだ。
これが本格化すると、タクシーやトラックが自動運転になったり、会社での事務作業が無人でできるようになったりするので、仕事の生産性は劇的に向上し、「働きたい人だけ働く世界」になっていく。
もし、私たち人間中心社会を望むならば、今までさまざまな社会課題を乗り越えてきた大人たちの経験と知恵をもとに、その経験と知恵を、AIにより再現性あるソリューションとして継承する子供たちとの共創が必要になる。
そのためには、誰もが生きる目的の自らの意思で選択し、その目的を、他社貢献をとおして実現できるように、生涯、学び、教えあえる環境をつくれるかどうかが鍵となる。
SDGs1 貧困をなくそう
「逆説の10か条」
- 人は不合理で、わからず屋で、わがままな存在だ。それでもなお、人を愛しなさい。
- 何か良いことをすれば、隠された利己的な動機があるはずだと人に責められるだろう。
それでもなお、良いことをしなさい。 - 成功すれば、うその友だちと本物の敵を得ることになる。
それでもなお、成功しなさい。 - 今日の善行は明日になれば忘れられてしまうだろう。
それでもなお、良いことをしなさい。 - 正直で率直なあり方はあなたを無防備にするだろう。
それでもなお、正直で率直なあなたでいなさい。 - もっとも大きな考えをもったもっとも大きな男女は、もっとも小さな心をもったもっとも小さな男女によって撃ち落されるかもしれない。
それでもなお、大きな考えをもちなさい。 - 人は弱者をひいきにはするが、勝者のあとにしかついていかない。
それでもなお、弱者のために戦いなさい。 - 何年もかけて築いたものが一夜にして崩れ去るかもしれない。
それでもなお、築きあげなさい。 - 人が本当に助けを必要としていても、実際に助けの手を差し伸べると攻撃されるかもしれない。
それでもなお、人を助けなさい。 - 世界のために最善を尽くしても、その見返りにひどい仕打ちを受けるかもしれない。
それでもなお、世界のために最善を尽くしなさい。
出典:ケント・M・キース『それでもなお、人を愛しなさい――人生の意味を見つけるための逆説の10か条』早川書房
「逆説の10か条」からもわかるように、この世の中は、実現する価値があることほど、潰そうとする圧力がかかる。そして、その圧力から逃れるコツがある。
――理解しない人を理解させるより、理解しあえる少人数と、まずは集えばいい。
どだい、わかってくれない人に「わかってくれ」と期待すること自体が、間違いなのだ。
特に今回、突破口を開けたのは、「大胆な価格をつけること」。
なぜなら、価格とは、格に価すること。
0円の提案には、タダでもらおうとする格(クラス)の人たちが集まってくるし、100万円の提案には、お金以上の何かを求める格(クラス)の人たちが集まってくる。
今回、100万円という価格をつけたことで、本気で世界を良くしたいという仲間が集まり、新しい現実が生み出された。
つまり、自分たちの価を高めることで、格の高い人を集めることができるし、また逆に、自分たちの格を高めることで、価を高めることができるのである。
SDGs2 飢餓をゼロに
「ザ・モデル」とは、CRM分野における代表的企業であるセールスフォース・ドットコムが体系化した営業プロセスモデルのことだ。具体的には、
・営業プロセスを切り分け、各段階での情報を数値化・可視化する
・各段階を担当する部門間が連携することで、顧客満足の向上を図る
ことで、収益を最大化させる仕組みのことだ。
ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を取った造語。企業は、この三つの分野で公正さと透明性を求められるようになっており、大手企業の株主向け報告書では、年々ESGに対する義務が強化されている。
飢餓は、食料がないから起こるのではない。平和がないから起こるのである。
SDGs3 すべての人に健康と福祉を
コネクテッド戦略とは、簡単にいえば、24時間365日、顧客データへ高頻度でアクセスできる環境をつくることで、その顧客にぴったりのサービスを、ぴったりのタイミングで提供できるようにする戦略だ。
◆すべてのビジネスは健康産業にコネクトしていく
このように体に関わるデータ、そして、その人が置かれた環境に関するデータが常時、得られるようになってくると、あらゆる病気の早期発見や予防ができる時代が始まる。
SDGs4 質の高い教育をみんなに
探究学習とは、学習者自らが課題を設定し、解決に向けて情報を収集・整理・分析したり、周囲の人と意見交換・協働したりしながら進めていく学習活動のことだ。
自ら夢中になれるプロジェクトをつくり、その達成に向けて、周りと協力しながら、自分の選択で学ぶことである。
内発的動機による学習とは、意欲的にやりたいから取り組む学習。
それに対して、外発的動機による学習とは、義務感から仕方なく取り組む学習。
私の観察によれば、生きるか死ぬかの瀬戸際を体験した人の中に、社会貢献への強い使命感を持ち、卓越した実績を達成する人が多い。
この探究学習によって、これから活躍する人材を準備するには、何をどう教えるかという「教育カリキュラム」だけではなく、社会全体の教育への関わり方、すなわち「教育システム」をアップデートしなければならない。
その教育システムのアップデートとは、ズバリ、「教育」から「協育」へのシフトであると、私は考えている。「協育」とは、文字どおり「パートナーシップによる人材育成」のことだ。
なぜなら好都合なことに、少子高齢化が進んだ結果、学びたい人よりも、教えたい人のほうが多くなったからだ。金銭的報酬よりも、自分の経験を未来に引き継ぐという精神的報酬に、より価値を感じる人たちに協力してもらえばいいのである。
SDGs5 ジェンダー平等を実現しよう
一つにフォーカスすることで、何倍もの効果を得るアプローチを、センターピン集中戦略という。
ボーリングで、センターにある1本のピンが倒れることで、10本すべてが倒れるところからきているコンセプトだ。
原歯科医院の事例からわかるのは、子育ての負担がお母さんに集中しており、そのお母さんをサポートすることで、その価値が家族中に広がるということである。
そして、お母さんを動かすには、子供のニーズに配慮することがセンターピンだったということだ。
一般的に男性は、集団で動く場合、「縦のラインの組織」をつくる傾向がある。上下関係をつくり、上が下へ指示することで物事を進めていく。一方、女性は「横のラインの連携」を重視する。
上下関係はあまりつくらず、同じ立場の仲間とネットワークを築き、物事を進めていく。
なぜなら、デジタル的な組織では全部門が連携し、すべての部署から生じるデータを統合し、見込み客を育成し、一生の顧客にしていくことが求められるからだ。
組織横断的な数珠つなぎのカスタマージャーニーを設計する必要がある。
このためには、横の連携をするのが得意な、女性の活躍が大きな力となる。
デジタルマーケティングの日常的な作業は、丁寧に人間関係をつくっていくところにその特徴がある。
具体的には、広告経由で問い合わせを獲得したら、顧客を育成する「ナーチャリング」を行い、契約した顧客に商品・サービスを日常的に使ってもらうように習慣づけする「オンボーディング」を行い、成約後の顧客を継続的にサポートする「カスタマーサクセス」を行う。
段階を追って徐々に人間関係を育んでいくわけで、これは男性よりも女性が得意とする分野だ。
ペンシルベニア大学ウォートン・スクールの元国際経営学教授で、現在はケンブリッジ大学の学部長を務めるマウロ・ギレン氏が著した『2030』によれば、世界の富を持つ人のうち、女性が占める割合は2000年に15%だったのが、2030年には55%に上がるという。
理由の一つは、女性のほうが男性よりも寿命が長く、男性からの相続を受ける機会が多いからだ。女性が富を握るようになると、世の中の消費傾向が大きく変わる。
中でも投資、教育、住宅の三分野は、男性よりも女性にとって関心が高く、よりお金を使う傾向がある。
あと10年もしないうちに、あらゆる分野で、女性ニーズを中心に、企業戦略や商品戦略の変更が行われるようになる。つまり、女性を理解することなく、企業は成長しない時代に入った。
SDGs6 安全な水とトイレを世界中に
これまでの一般的な慈善事業は、10%の富裕層がファンドレイジング(資金調達)パーティに参加し、億単位の大金を寄付し、ボトム20%の貧困層を支えるというモデルだった。
しかし、「100%MAD」のターゲットは、急増している世界の中間層、30億~40億人だ。
彼らに呼びかける寄付は一人当たりたった1ドル。
しかし、10億人が参加すれば、寄付金は総額10億ドルに達する。
通常の慈善事業は20%程度が間接費に使われるが、100%MADでは一切、間接費を引かず、いただいた寄付金を100%、支援に関わる団体に直接寄付するという構想だ。
1 誰が?
世界を変えたい、しかし変えられないという無力感を持ったユース世代が
2 何をきっかけに
モバイル端末からたった1ドル寄付をすることで
3 どうなった?
世界の水問題を、目に見えるほど改善する大きな力を発揮した
つまり、このコンセプトが魅力的なのは、今まで世界の難問に対して無力であると思っていた普通の若者が、楽しみながら世界を変えるインパクトを持てるようになるということ。
このビフォーアフターのギャップが大きければ大きいほど、人は魅了される。
SDGs7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
「綺麗ごとだけでは、うまくいかない」――これが、マーケティングの鉄則だからだ。
どんなに社会的大義を持っていたとしても、それに顧客はお金を出さないということ。
お金を支払うのは、あくまでも個人的な「ペイン(痛み)」を解消してくれるかどうかなのである。
第1に、ペインの解消。第2にSDGsの順番が鉄則だ。
SDGs8 働きがいも経済成長も
実は、時代の変わり目では、いつも本が大きな役割を果たしていた。
たとえば江戸時代の末期には、吉田松陰の「松下村塾」や緒方洪庵の「適塾」などの私塾が次々と生まれたが、そこで行われていたのは、塾生たち全員で本を読み、議論を交わすこと――つまり「読書会」だった。
読書会に参加すると、選んだ本についてお互いの意見や疑問点を話し合っているうちに、短時間で驚くほど理解が進む。複数人数で話しあううちに、自分が読めていなかった部分に気づかされ、スパイラル効果で内容が深く把握されるため、特に一人では読むのが億劫な分厚く難解な本こそ、読書会には最適だ。
SDGs9 産業と技術革新の基盤をつくろう
この革命に向かう過程では、AI(人工知能)やIOT(モノのインターネット)技術が普及し、人間がやるよりも機械がやるほうが圧倒的に安全で信頼できるという状況が増えていく。
その結果、人間がやるべき仕事は、確実に減ってくる。
第4次産業革命の世の中では、IOTによってモノ同士がつながり、AIによってオペレーションが自動化される結果、もはや人間の判断を超えた成長が始まる時代になる。
そこで、AIを活用する組織に生まれ変わるための、突破口を開くツールをお教えしよう。
それが、ダッシュボードだ。ダッシュボードとは、あらゆるデータを一覧し、分析するためのBI(ビジネスインテリジェンス)ツールのことである。
今までバラバラに管理していた、事業の鍵となる数値をまとめて表示することができる。
ちなみに、「グーグルデータポータル」という無料ツールを使えば、ダッシュボードが簡単につくれる。表示できるデータソースの種類は、広告配信ツールやアナリティクスツール、キーワードツール、SNSなど多岐にわたる。
もはや未来は、想像力次第。こうした夢のある未来づくりに取り組むのは、ロボット好きにはたまらないだろう。
しかも、無料でできるようになっているのだから、私たちは、もはや考える必要はない。
「やるのか?」それとも、「今すぐやるのか?」――選択肢は、そのいずれかだ。
それは、ゲーム感覚で無料ツールを触ってみるという、ちょっとした「冒険心」があるかどうか。
そして、その冒険心を発揮できる、ちょっとした「遊園地」があるかどうかにかかっている。
SDGs10 人や国の不平等をなくそう
多様な人が集まり、今まで見えなかったつながりが発見され、新しい価値を生み出すのに効果的な場がある。それがビジネスコンテスト、略して「ビジコン」である。
ビジコンには著名かつ実績のある審査員が招かれるが、それぞれ所属している業界も経験もバラバラなことが多い。だから、どのビジネスが優れているかの判断基準は、その人の主観が9割。
だから、あったらいいなと思える、想いの強いビジネスが評価されがちになる。
①商品・サービスの名称(キャッチコピー)から内容がイメージできるか?
②ターゲットの顧客像は明確か?
③ターゲット顧客の問題や理想などの欲求を的確に捉えているか?
④③の欲求を満たすために、提供する商品・サービスはなくてはならないものか?
⑤提供する商品・サービスは他のものとどう違うのかが明確か?
⑥対象となる市場規模(キーワードの検索ボリューム)が小さすぎないか?
⑦これを購入するとどんな変化が期待できるか(=ベネフィット)が明確か?
⑧提供者もしくはプロダクトに権威性/信憑性(お客様の声)があるか?
⑨ベネフィット(得)に対してオファー(販売条件)が魅力的(割安感がある)か?
⑩ベネフィットが得られるエビデンス(信頼できる技術やデータ)があるか?
⑪見込客にアクセスしやすい精度の高いデータソース/広告メディアがあるか?
⑫参入障壁は築かれているか?(ex.特許、許認可制度など)
⑬購入に際して顧客の努力を要しないか?
⑭収益性はあるか?
⑮ビジネスの拡大に際しソース(人・技術・資金・時間)の制約はないか?
⑯関連商品・サービスを含めLTV増大(紹介を含む)が期待できるか?
実はマルシェ自体がやっていることは、何も変わっていない。
必要とする資源も変わっていない。
しかし、視点をほんのちょっと変えるだけで、ビジネスとして成立するようになるのである。
このように「あったらいいな」から「なくてはならない」ビジネスモデルに転換することで。
「このビジネスは見込みがある」とお金を出す人も増える。
その結果、ビジネスとしての継続性も高まるというわけだ。
SDGs11 住み続けられるまちづくりを
「住み続けられるまちづくり」をするための、最強マーケティング戦略がある。
それが何かと言えば、ズバリ――「祭り」である。私は、東日本大震災の際、景気がどん底に落ち込んだ地方経済を明るくするために、「何かできることはないか」と考えた。
その結果、毎年年初に全国各都市を訪れ、地域リーダーと交流する講演会を10年連続で開催することを決意した。
そうして、2012年から10年間、20都市以上を縦断しながら定点観測しているうちに、次第にはっきりと見えてきたことがある。
それは、何かといえば、景気がスピーディに回復していく地域には、一つの共通点があり、それは「祭りが、盛んだ」ということだった。
特に祭りを支えている企業リーダーが明確にいる地域は、毎年訪れるたびに目新しい変化があり、街の景観が明るく変わっていく。
SDGs12 つくる責任 つかう責任
責任の最も簡単な担い方は、顧客の声に耳を傾け、顧客の問いに真摯に答え、顧客の要望に添うように努めることなのだ。
そして顧客に対する責任を果たすことは、結果として、社会に対する責任も果たすことになる。
結論から言えば――顧客からの問いに真摯に答えることを会社の文化にすると、顧客が急増する。
この究極のマーケティング策を明らかにした書籍が、『世界一シンプルな増客マシーンの作り方』(マーカス・シェリダン著、邦訳・実業之日本社)である。
シェリダン氏が自らの実践結果を計測したところ、顧客に読まれるコンテンツは、次の五つの分野であることがわかったという。
① 価格とコスト
② 問題点(商品の欠点)
③ 競合との比較
④ 商品レビュー
⑤ 分野ナンバーワン
まず、プラットフォーム事業とは何か
デジタル上に情報や商品、サービスを提供する人が集まる「場」を提供する事業のことである。
評価が少しつくだけでも、やり続けるインセンティブになる。特に高評価がつき、さらに喜びの声も寄せられると、それだけで普段は感じることがない「やりがい」が生まれる。
つまり当初は、レビュー自体が、プラットフォーム利用者の報酬になるのである。
このようにレビューは利用者を集めるが、さらにブレイクスルーを生む活用法がある。
それは、評価基準を定めることだ。
今まであまり評価されることがなかった不透明な市場に、評価基準をつくると、一気に市場が拡大する。
SDGs13 気候変動に具体的な対策を
OKRとは、objective(目標)とKey Result(主要な結果)の頭文字を取った目標管理法である。Oには、「何を」ゴールとするかを考えて、プロジェクトの目標を掲げる。
これは頑張れば達成できそうだと思う結果の半分程度をKRの数値とするか、もしくは数値は維持しながらも、達成までの期間を倍にするといい。
このように野心的な目標と実現的な結果の組みあわせが、OKRを非常に強力なツールにしている。
OKRのO、すなわち目標には、数値を入れないほうがいいというのがルールだ。
「人事評価に使わない」というものがある。
OKRには「野心的なOKR」と「必ず達成するOKR」の二つの種類がある。「必ず達成するOKR」は、文字通り100%達成しなければならないのだが、「野心的なOKR」は、完全に達成できてしまうのであれば、それは逆に野心が足りていないとも考えられる。
だから、70%程度がベストな達成率となる。
SDGs14 海の豊かさを守ろう
2020年7月、レジ袋が有料化された。その目的は、マイクロプラスチックによる海洋汚染を減らすことだ。
「プラスチックは自然界では数百年経っても分解されない」というのが常識なので、今回のレジ袋有料化のように、「これ以上、レジ袋を使わないようにする」とか、「海からプラスチックを回収し続ける」というのが、論理的に導かれた解決策になる。
このように既存の思考枠の中で問題解決策を探る思考法のことを、垂直思考(ヴァーティカルシンキング)という。垂直思考はデータや事実に基づきロジカルに話を進めていくので、誰にとっても正解や正論として、受け入れられやすい。
しかし、アインシュタインが「どんな問題も、それをつくり出した時の意識レベルでは解決できない」というように、抜本的な解決策にはつながらない。
複雑に絡みあった問題解決に効果的なのが、既存の思考枠から外れた発想を生み出す水平思考(ラテラルシンキング)だ。
こちらは、常識や前提を無視して発想するので、新しいアイデアを創発する時に向いている。
水平思考を行うには、六つの異なる側面から物事を見ることによってアイデアを生み出す「シックス・ハット法」や、「なぜ」を5回繰り返して聞くことで問題の根本的原因を探り当てる「なぜなぜ分析法」がある。
理想の未来から遡ることで発想を生み出す「逆算思考」だ。
SDGs15 陸の豊かさも守ろう
森林の木を適度に間伐しないと、木は成長しないし、森は荒れる。
森が荒れると、水が枯れて、災害が起こりやすくなる。
地域を守るためにも、山林を放っておくわけにはいかない。
問題は手持ちの資金が足らず、間伐する人を確保できないことだ。いかにして人を確保するか?
そこで企画したのが「キコリ講座」だ。「木こりになる方法を教えます」と、実際に森林で木を切る方法を教えるのである。受講した人は「キコリ」という肩書きを名刺に入れられ、また木材伐採作業者「キコリ」としての仕事が可能になる。
こうして興味や熱意を持った人を集めることで、森の間伐ができるし、林業の魅力を多くの人に知らしめることができる。一石二鳥の講座というわけだ。
それだけにとどまらない。高橋氏は、間伐した木材を、「木質ペレット」に加工する事業を始めた。
つまり、「キコリ講座」が、地元の森林の木を地元で使うエネルギーとして活用する循環型社会を生み出しているのである。
アイデア次第で、衰退産業でもこれだけのことができるというわけだ。
SDGs16 平和と公正をすべての人に
欠点を避けずに、むしろ包み込んで消化し、統合することが、企業や法人の成長には欠かせない。
欠点と長所を統合していくと、そればブランドに変わる。
シャドーの多くは、業績の良い時に、顧客からのクレームの形で現れる。
この時、対処法は大きく分けて二つ。
クレームの形で現れた自分のシャドーに向きあうか、それとも逃げるか、だ。
多くの人や会社は逃げることを選びがちだが、シャドーにしっかりと向きあい、それを吸収すると、人も会社も非常に強くなる。
SDGs17 パートナーシップで目標を達成しよう
社員が残業続きだったシステム開発会社で、ある工夫をした途端、その日から残業がなくなったというのだ。
二人組で作業するようにしたことだ。
しかも、椅子は二つあるが、パソコンは1台のみ。一人が座ってプログラミングをしている時は、もう一人は横に立ってそのプログラムについて質問をする。
エラーが生じた場合には「ここを直したほうがいいんじゃない?」などとアドバイスをする。
そして、1時間ほど作業したら、座ってプログラミングをする人と、かたわらに立って質問をする人を入れ替える。
ピューリッツァー賞を受賞した脚本家のトニー・クシュナーは著者の中で、「これ以上分けることができない人間の最小ユニットは一人ではなく二人である。
一人だと思うのはフィクションでしかない」と断言している。
またILO(国際労働機関)のシニアコンサルタントであるジョセフ・プロコペンコは、「一人のフルタイム社員よりもハーフタイムで働く二人の社員のほうが総合的に大きな結果を頻繁に上げる」という調査結果を発表している。
最近は、ヒューリスティックな仕事が中心となっている。ヒューリスティックな仕事とは、仕事を進める中で新しい発見をしながら、仕事の内容自体を改善していく仕事だ。
一番重要なのは「大きな目標を掲げること」だ。大きな目標を掲げると、今までの小さな円と大きな円の間にギャップが生まれる。
そこに新しいパートナーが入り込んでくるのである。
今月はこの本を選んだのは、優秀なマーケッターであり、マインドマップを普及させたように教育にも造詣の深い神田昌則さんが、未来をどう考えているのか?
SDGsが今後、日本でどのように拡がるのか?
Co2の排出権のように一過性の物なのか、我々のビジネスを根幹から変化させていくのか。
いろんな可能性も知った方が、判断軸がしっかりすると思い紹介させて頂きました。
特に私に刺さった言葉は「大丈夫。一人じゃない。」です。
凄く変化している現代で、不安に思うことも多々あるでしょうが、凄く勇気づけられる一冊です。
お勧め度:☆☆☆☆ 星4つ
(桐元 久佳)