とにかく仕組み化 ─人の上に立ち続けるための思考法 安藤 広大 著

はじめに 人の上に立ち続けるための思考法

過去に作られて形骸化したルールを、もっと大きな仕組みの枠組みによってアップデートしていく。その責任をとるべき人が、人の上に立つべきなのです。
協力せざるをえない仕組みを、人の上に立つ人がつくり上げるのです。

「性弱説」というのは、「人はラクをして生きるものだ」と、。
精神論を諦めた上で物事を考えたほうがいい、という教えです。
性弱説にのっとって改善していく姿勢が、組織をどんどんよい方向に導きます。

 

序章 なぜ「とにかく仕組み化」なのか

期限を守ることが最低限できたうえで、初めて仕組みは機能します。
「間に合わないことがわかったら、その時点で必ず期限が来る前に知らせてください。
そのときに、『いつだったら間に合いそうか』の見積もりも立てて報告するように」と部下に伝えるようにします。

プロは、ルールを決め、線引きして、仕組みを守り切ります。
「仕組み化」の反対は、「属人化」です。
属人化とは、その人にしかできない業務が存在してしまっている状態です。
マネージャーは、属人化を壊す存在でないといけません。
自然状態になるプレーヤーを、仕組み化する立場です。

 

第1章 正しく線を引く――「責任と権限」

権力とは、権利を持つことが許された人が、それを正しく行使するということです。
ただし、「いい権利」と「悪い権利」を分けて考えなくてはいけません。
「いい権利」は、その権利の範囲が「文章として明確になっているかどうか」です。
「悪い権利」は、「文章として明確になっていない曖昧な権利」のことです。

「任せる」とは、明文化した責任と権限を与えることです。
「何をしなければいけないか」「そのために何をやっていいか」その線引きをするのです。
そういう仕組みを整えておくと、部下からどんどん「権限の獲得」の相談や報告があがってきます。こうやって、仕事を進める上での「責任」と「権限」の認識にズレがない状態をつくります。
リーダーに任命して、「責任」と「権限」を与えて育てる。
新卒の社員を面接で見抜くのと同じで、あくまで機会を与えるのみ。

 

第2章 本当の意味での怖い人――「危機感」

「手を抜いたことを見抜かれる」「言い訳が通じない」「ルールを守らないと指摘される」という指導を受けます。
基準が明確で、誰が見ても「理不尽な部分」がありません。
それが、ここで言いたい「怖い人」の姿です。
その厳しさを「本当の優しさ」だと部下が認識できると、一気に成長できるチャンスです。
指導された後に、「このままではまずい」という、恐怖が本人の中に芽生えないと、意味がありません。
頑張る方向性がわかると「努力すれば恐怖から回避できる」というように、正しく現実と向き合うようになります。
そういった「正しい逃げ道」とセットであることが大事です。
「明文化されたこと」について指摘するだけです。
逆に「書いていないこと」で罰を与えたりしてはいけないのです。
ルールにないことでは、絶対に厳しく指導しない。つねに責めるのは、「仕組み」のほうです。

「ピアプレッシャー」という言葉がありますが、近くに人がいることは、シンプルに危機感を生む効果があります。
カフェや図書館では仕事がはかどり、家ではダラけてしまうのは、単純に緊張がなくなるからです。ここでも性弱説が働きます。

キツいブラック企業と、ゆるいブラック企業。
どちらにも共通するのは、「明文化されていない」「境界線が曖昧になっている」という点です。

 

第3章 負けを認められること――「比較と平等」

人間は、つねに物事を比較して価値を認識します。
人の上に立つ人は、人と比べるための「仕組み」を整えないといけません。
事実をハッキリと直視することによって、危機感が出ます。
人と比べないように「隠すような忖度」はしないほうがいいのです。
そうしてしまうと、頑張っている人が頑張らなくなります。
いかなるときも、「成長したい人」を基準に判断しましょう。
「成長する機会」を奪わないことです。

「とりあえずやってみる。まずはできる人から学ぼう」そういうシンプルな素直さが人を成長させます。
仕事ができているプレーヤーから話を聞き、「成功パターン」をつくります。
いわゆる「マニュアル」です。
「最初に、どんな仮説を立てたのか」
「その上で、具体的に、どのような行動をしたのか」
「以前にどんな失敗があり、どんな改善をしたのか」
「この経験を踏まえて、どの方法に再現性があると思うのか」などの仕事の流れを聞いたうえで、誰もが実行できるようにします。

特別扱いをしてしまうと、「言ったもの勝ち」の状況を生んでしまいます。
人を見るのではなく、仕組みを見るようにしてください。
そうることで、責任のある判断ができるはずです。

 

第4章 神の見えざる手――「企業理念」

仕組み化は、あくまで目指すべき「ゴール」があったうえでの必要な考え方です。
つまり、手段です。

きちんと企業理念を持って、社会に向けて貢献している企業で働いているのに、「ここは自分がいるべき組織ではない」と言っていることのほうがダサいのです。
たくさんの人が集まった集団では大きなことを成し遂げられる。
そんな組織の中でしか、「自己実現」なんて、できやしないのです。
そんなに不満があるなら、早く成長して人の上に立ち、自らの責任において「仕組み」を変えればいいのです。
仲間や周囲の助けによって、主人公は成長していきます。
最初は反発していても、目的を共有し、お互いが協力することによって、敵や悪を倒したりします。

 

第5章 より大きなことを成す――「進行感」

大きな荷物も、小さく分けると、持ち運べる。その当たり前のことが、仕事になるとできなくなります。

組織人になるメリットは、たくさんあります。部署を横断して、「これなら、あの人に任せられるかもしれない」という目利きができるようにもなります。
「この分野は、あの人に聞く」という判断によって、さらに仕事のスピードが増します。
一人の人間は小さくても、組織になることでものすごいことをやってのける。
その可能性にあふれているのです。

会社が企業理念の実現に近づいていく実感が得られることによる「進行感」がもっとも大切です。
会社は、目的や目標に向けて進んでいく存在です。
企業理念にどんどん近づいていく。
そうやって全体が前に進んでいくことで発生するのが、「進行感」です。それにより、組織の一員であることに「誇り」を持つことができます。
人の上に立つ人であれば、その軸がブレないようにしてください。
「組織が成長して嬉しくない人はいない」そう信じるようにするのです。

 

終章  「仕組み化」のない別世界

いつまでも成長し続けたい人に、つねに会社は「居場所」を与えます。
あなたが成長するために「負荷」も与えます。
そこで努力して、上に目指す人になってほしい。

会社は仕事をするコミュニティです。
ただし、コミュニティは一つとは限りません。
友達。家族。趣味。そこでは、いかにあなたが「替えが効かないか」が重要になります。
そうです。
それらのコミュニティは、仕事のコミュニティとは、真逆なのです。
ここで大事なのは、「どちらのコミュニティも生活に欠かせない」また、「混ぜてはいけない」ということも言えます。
仕事によって糧を得ることで、プライベートを充実させることができる。

 

今月はこの本を選んだのは、著者の2冊目の著書「数値化の鬼」から参考になると思っていたからです。
「リーダーの仮面」「数値化の鬼」に続く第3段です。
ぜひシリーズ本も含めてご購入をお勧め致します。
お勧め度:☆☆☆☆ 星4つ
(桐元 久佳)

とにかく仕組み化 ── 人の上に立ち続けるための思考法