序章 “どん底部隊”が常勝軍団に
結果が社員を変える。前年まで、宅配営業部は、会社の二軍的は部署と思われていた。
店舗事業など第1線の部署から退いた職員が多かったのだ。
「実際にはまじめで実直な人間ばかりなんですよ。
でも、店舗で働いていた職員が多いということもあり、宅配の顧客を増やすにはどうすればいいか、わからなかったんですよ。」
第1章 とにかく「数」と「量」を増やせ
改革成功の一つ目の条件「トップの決断力とそのスピード」だ。
全社一丸となって営業改革を受け入れるーーこれが二つ目の改革成功の条件だ。
営業力=営業量(量)×営業能力(質)
営業量=仕事時間―(意識的怠慢時間+結果的
怠慢時間)
営業能力=(知識力+センス力)×印象力
営業改革の基本は、この「3つの方程式」に基づいて、それぞれの要素の現状を分析し、対策を打つことになる。営業改革で新人を戦力化しやすいのは、新人はまだ“自分”が確立されていないからだ。
結局、“自分を捨て他人のやり方を受け入れる”という意識改革を同時に行わなければならない。
多少強引でも、量を増やすという荒療治によって数字を上げ、「見た目の成績」が上がっているうちに質の改善をはかるのだ。
業務命令で営業量を増やすという荒療治をしている間に、営業マン個々の意識にある変化が訪れる。“自分”を捨てることに抵抗がなくなるのだ。
「営業量」とは実際に商談をしている時間量のことを意味する。
その手段として、直接面談だけではなく、電話商談も含める。
①営業件数(回る件数)をまずは「2倍」で設定する。
②「結果的怠慢時間」を削減する。
③もともと成績が優秀な社員は、好きなようにやらせる。
第2章 無駄は徹底的に排除する
初期段階では、組織的に無駄な作業を洗い出し、これを徹底的に排除しなくてはいけない。
怠慢時間の削減ができなければ、結局、“改革”は絵に描いた餅になってしまう。
「結果的怠慢時間」を自覚する。「結果的怠慢」とは、本人にその自覚がないものの、結果として無駄になっていることだ。まずは移動時間。
トップクラスの営業マンは、結果的怠慢時間が5割と少なく、その2割時間を営業時間に回している。
つまり、営業量が4割に達している。
ここが成績の差になっているのだ。
営業マン一人一人が企画書を作るのであれば、優秀な営業マンの企画書を流用させてもらい、その分の時間を外回りに当てたほうがいい。
営業先にあわせなければいけない部分だけをカスタマイズすれば、それだけでデスクワークは大幅に減る。自分で作る下手な企画書よりも、よほど内容なある提案ができるだろうし、そのプレゼンテーション経験が能力アップにつながる可能性もある。
「(営業マンたちに)たった一つの活動―電話をかけること―に専念させていた。
仕事はそれだけだった。
出勤してきて、笑顔を一つ浮かべ、電話をかけ始める。退勤するまで、ずっと電話」
第3章 社員と組織を見極めよ
優秀社員にいままで通りの営業スタイルをキープさせることで、暗黙知のまま放置されていた彼らのノウハウやテクニックをじっくりと分析できる、そして、他の社員にも役立つ部分を、形式知としてまとめ上げるのだ。
改革成功の鍵を握っているのはそれ以外の凡人社員の底上げだ。
そのためにマネジメント側にとって大切なことは、改革案を正式に発表したら、現場の声、特に言い訳や反発に揺れたりしないことだ。
いままでと違うやり方、考え方を素直に受け入れることができる人は、とっくに優秀社員に入っている。
凡人社員が凡人たる理由は、そこだ。
成功のためにも、早い段階で「確かに成績は上向いている」と実感させることが第一歩だ。
そのためには、「営業量の増加」という単純な方法を徹底させ、その方針をブレさせないことだ。
現場の声に惑わされない強い信念―これが改革成功の3つ目の条件だ。
企業は、広島東洋カープを見習うべきだろう。
慢性的に資金力が乏しいカープは、投打とも一流選手は他球団やメジャーへ去るという前提でチーム作りを行っている。
組織力の強化に力を注いでいる。
他のどの球団よりも練習量が多いと言われている。
だから、エースや四番バッターが次々と抜けても、チームとして成立しているのだろう。
第4章 やる気を生む「空気」を作る
営業量の増加が定着する前に、ノウハウやテクニックのレクチャーに入ってしまうと、間違いなく営業量は元に戻ってしまう。
コープさっぽろにはそのブレや焦りがなかった。
――改革成功の4つ目の条件はこうしてクリアされた。
どんな組織でも、ほとんどの幹部は部下に愛情を持っている。
身内はやっぱりかわいい。
しかし、社員の意見の一つ一つに対応していると、組織は崩壊する。
できるだけ、客観的な判断を行い、あるいは客観できる外部の立場の人間を活用して、思い切った改革ができるか――。
幹部としての力量が問われる局面である。
マネジャーが、改革への強い意志を営業マン一人一人に直接伝える。
そして、全員で心を合わせる―改革成功の5つ目の条件をクリアしたのだ。
第5章 現状の問題点をあぶり出す
改革の第一段階が「営業量の改革」なら、第二段階は「営業能力の改革」だ。
コープさっぽろ宅配事業部には、致命的な問題があった。
「営業ノウハウの共有化」が全くできていなかったことだ。
せっかく大勢の営業マンが膨大な時間をかけて営業を行っているのに、その経験が他の営業マンの役に立っていない。
また、個々の営業マンにどうやって営業するかが委ねられているため、問題のある手法も指摘されないままずっと続けられていることが多かった。
営業ノウハウの共有化に積極的に取り組んだのだ―これによって6つ目の改革成功条件がクリアできた。
「日次ヒアリング」
① その日の営業量とその内訳を確認する。
② ①の中で「見込み案件」として浮上したものをピックアップする。
③ ②の見込み案件について、その営業先とのやりとりを“忠実”に再現させる
④ 「次の一手」をいつどのようにうちのかをチェックする
⑤ ④に対して、マネジャーとしてのアドバイスをする
⑥ ⑤のアドバイスを実践する能力が不足している場合、トレーニングを行う。
⑦ その他、時間の使い方など気がついた点を指摘する
営業に日報は、“嘘”が実に多く、また、悪い情報は書かれていないことが多い。
一方、面と向かって話せば、ニュアンスや話し方から事実に近づくことができる。
事実が曖昧な場合は、相手とのやりとりをセリフのままに再現させたり、質問したりすることで、部下が隠している不都合な情報もあぶり出すことができる。
契約と取りこぼす原因とは
①アタックしないまなの営業先を数多く残す
②すぐ可能性をつぶす
③再訪問、継続訪問をしない
④商談ポイントを整理、把握できない。
営業格差が生じやすいのは、ニーズとネックが拮抗していたり、ネックのほうが上回っているので、そのネックの解決が必須だ。
つまり、商談能力の差が、結果を左右するということになる。
しかし、できる営業マンは、「突然進まなくなった理由は何でしょうか?」と相手にずばり確認する。
相手のネックをきちんと把握するのだ。
できない営業マンは、怖くてこれができない。
その差は大きい。
第6章 成功率を高める工夫をする
最初は数合わせであっても、100件を追いかけることが重要だ。
しかし、営業量の重要性が浸透してきたら、次の段階へ移行していく必要がある。
単に100件回るだけではダメだということを理解するためだ。
そこで、考えたのが、「3アポ100ローラー」である。
やみくもに100件回るのではなく、3件のアポを確保してからの訪問とする。
要は、「1アポ約30ローラー×3回」という発想の転換だ。
営業は、理論で捉えることは大切だが、感覚に訴えることも大切だ。
営業日時、観察できたこと、ニーズになりそうなもの、交わした会話、断られた理由など、覚えている限りのことをメモしておく。
営業に限らず、どんな仕事でも、できる人はメモの重要性をよく理解している。
メモはできるだけ正確に、詳細を記録する。
成功例も失敗例も記録する。
失敗例の記録は自分の心の傷をえぐる作業になるのでつらいが、怠ってはいけない。
第7章 刺激を与えて力を伸ばす
トレーナーには優秀な人材が必要だ。仕事ができ、教えることがうまく、人柄も良い人間でないと務まらない。
しかしそういう優秀な人間を現場から引き抜くと、その分の成績が確実に下がる。
企業はそのリスクが取れないのだ。
キャラバン隊は、合宿状態で一つの町に1週間から10日ほど滞在し、契約が難航しているエリアにローラー営業をかける。
このキャラバン隊の隠れた存在意義は、契約が取れない言い訳を封じ込めるところにある。
大局的に見れば、やはり組織は硬直する。
そこに横槍をいれる役割を果たしたのが、キャラバン隊だ。
たとえ目標を達成し続けていたとしても、先を見通した刺激を与えるのだ。
「成績のいい社員は、大々的にほめるようにしたんです。
そっと呼んでほめるようなことはしません。
大勢の前で努力して成果が上がったことを讃えます。
そこにいる全員が拍手をします。
ほめられた本人が驚くくらい、一生忘れない思い出になるくらい、盛大に行います。
人間というのはほめられると嬉しいものです。
気持ちいいものです。
よし、これからも頑張ろうとみな思うはずです。
営業の進化のことを、「営業チャンネルの拡大」と呼んでいる―これが進むことが、7つ目の改革条件だ。
第8章 「マニュアル」で知識を統一せよ
組織全体の営業力が脆弱な企業に共通していることがある。
個々人では優れたノウハウを沢山持っているにもかかわらず、組織としてそれらを集め、統一化、共有化しようとしてこなかった点だ。
どの会社でも成績上位者は、基本的なノウハウに独自の知恵や工夫を加えていることだ。
第9章 準備を怠る者は結果を出せない
営業トークは生ものだ。ライブだ。相手の年齢、職業、地域、性別によって展開は変わる。
特に年齢は重要だ。
コープさっぽろでは全員が営業するときに必ず持ち歩くように徹底した「営業13必需品」のリストを統一している。
明文化したルールにしなければ、「今日は忘れたけど、まあいいや」と易きに流れるのが人間というものである。
第10章 話すよりまず観察する
マンションの廊下、ドアの前で営業担当の宮本さんは自分の立ち位置を慎重にチェックする。
ドアスコープのレンズから30~40センチ。
実はここが勝負だ。
営業の現場は顔を合わせることから始まる。
ドアを開けてもらわないことには、会話にならないし、もちろん契約にもつながらない。
お客様のニーズがネックを超えるまで、丁寧につきあうのが営業の常道だ。
営業はお客様の満足を得ることが仕事だという意識を忘れてはいけない。
第11章 「ニーズ」と「ネック」を読め
商談が始まれば、大切なことは、お客様のニーズを喚起することと、契約の障害になりそうなネックを掴むことだ。
「ニーズ」とは、お客様が欲する動機となるものだ。
「よく聞くネック」「断られるときに多い理由」「ありがちな誤解」については、どう理解してもらうかをあらかじめ用意し、ある程度シミュレーションしておくといい。
ほとんどの営業マンは、「契約しない原因は何なのでしょうか?」とは、聞けないのだ。
聞けないから、ネック・トークはいつまでたっても進化していかない。
たとえ怖くても、ネックを積極的に聞き出してください。
ネックを具体的に羅列して、それぞれを解決する、あるいはそれを補うメリットを提案することで、営業成果はぐんぐん上がるはずです。
第12章 相手の心に寄り添う
マシンガンのようにしゃべるよりも、相手の話をじっくり聞くタイプの営業マンのほうが、成績がいい。
商品の説明はできるだけ具体的に語ると、説得力が増し、相手は興味を持つ。
第13章 育成に手間を惜しむな
いかに同じことをくり返し教えることができるかは、マネジャーにとっても大切な資質だ。
一つのことを教えたら、せいぜい0.01ほど理解すると思っていれば間違いない。
言い方を換えれば、100回言われれば、人はたいていのことは覚える。
ほとんどの人間は、教わらないままだと何もできない。
そして一度話を聞いただけでは覚えられない。
幹部や管理職やリーダー的立場の人が、来る日来る日も同じことを言えることが、改革ではものすごく重要だ。
コンサルティングは、学校の授業のように、「一通り教えたらいい」というものでは決してありません。
重要なことを、できるまで何度も刷り込むように教えることが基本です。
また、それが私のプロとしての信念です。
第14章 モチベーションは作り出せる
ほとんどの営業マン、営業マネージャーは、「自己分析」が苦手だということだ。
営業マンが結果を出す上で重要なのは、「含蓄」「実行」「想定」「意欲」だと話している。
「含蓄」を「自分では理解できないことほど、それを取り入れ、真似をする努力をしよう」ということを伝えないときに使っている。
理解できないことほど、やってみる価値があると考えるべきだ。
というのも、自分の物差しと相手の物差しは、長さも目盛りも違うからだ。
そして、難しいと感じても、やりたくないと感じても、その意味がわかならくても、まずは「実行」してみることだ。
それまで、これまでやったことがない何かをやると、目の前に新しい扉が開く。
過去に見たことがない世界が広がるものだ。
ただし、闇雲に実行するのでは、出せる成果も出せない。「想定」は、実行する前にイメージトレーニングするという意味だ。
この意欲をガラッと変えるのは、実は一番難しい。
意欲は理屈ではないからだ。コントロールが難しい「意欲」ではなく、コントロール可能な「モチベーション」に働きかけることだ。
モチベーション・コントロールが仕事に与える影響は、非常に大きい。正のモチベーションとは、成果に対して誉める、あるいは成果に対して応じて報酬を与えることだ。
負のモチベーションとは、叱ったり、罰を与えたりすることである。
では、正のモチベーションと負のモチベーション、会社ではどちらが有効に働くのだろうか。
仕事に対する意欲の高い営業マンには、概して、正のモチベーションが効果的だ。
一方、仕事への意欲が低く、成績も悪い営業マンには、正のモチベーションよりも、負のモチベーション・コントロールのほうが有効な場合が多い。
今月はこの本を選んだのは、私が参加している「中尾塾」で中尾さんがお勧めされていた点と参加している仲間に今回紹介されているコープさっぽろの幹部の方々が多いので、興味本位で読みました。
著者の藤本さんは、営業コンサルタントとして、コープさっぽろさんの宅配事業本部との取り組みの要点が学べます。
目から鱗が落ちるポイントも多数あったので、お勧めです!
ぜひシリーズ本も含めてご購入をお勧め致します。
お勧め度:☆☆☆☆ 星4つ
(桐元 久佳)