よくあるQ&A ~役員へ賞与を支払うには~

Q: 役員への賞与と従業員への賞与に違いはありますか?

 

A: あります。
従業員への賞与は損金算入できるのに対し、役員への賞与は事前に税務署へ届出を行ったうえで、指定した日に決められた金額を支払わなければ損金算入できません。
これを事前確定届出給与といいます。

 

Q: 事前確定届出給与のメリットは?

 

A: 事前確定届出給与は年三回までの支給であれば、社会保険上は賞与として取り扱うことができます。
社会保険料の算出には通常、「標準報酬月額」を用いますが、賞与の場合は「標準報酬月額」ではなく、「標準賞与額」が適用されます。
「標準賞与額」を用いて計算する場合の社会保険料の上限は、健康保険が年間573万円、厚生年金保険料は月間150万円です。
月々の報酬の金額を低くして事前確定届出給与で多額の役員報酬(賞与)を支給することで、金額によっては年間の社会保険料を少なくすることができるメリットがあります。

 

Q: 事前確定届出給与のデメリットは?

 

A: 役員退職慰労金(退職金)の金額に影響する点があります。
退職金の計算は会社によって異なりますが、退職時の報酬月額をベースに計算する場合があります。
役員の月々の報酬は年に一度変更できるので、退任前の改定時期に、賞与をやめて月々の報酬を増やすように変更すればいい、という考え方もありますが、賞与を検討する際には会社の退職金の計算方法を見直しておきましょう。
また、社会保険料を減らせるメリットがある反面、社会保険料のうち厚生年金保険料は年金の給付に反映されるので、社会保険料を減らすということは将来もらえる年金の金額も減ってしまうというデメリットがあることを忘れないようにしましょう。

 

Q: 役員の賞与を支給するための流れは?

 

A: 事前確定届出給与を支給するにあたり、支給日と支給金額を決めなくてはなりません。
会社法によって、役員の報酬は「定款に定めていないときは株主総会の決議によって定める」とされています。
そのため、定款に定められていない場合、株主総会の決議が必要になります。
なお、株主総会で決議した役員の報酬を損金算入するには、議事録の作成も必要です。
議事録は税務調査で確認される可能性があるので、作成と保存を忘れないようにしましょう。
事前確定給与の支給日と支給金額を決めたら、税務署に事前確定届出給与に関する届出書を提出します。
納税地を管轄する税務署に提出または郵送しましょう。

 

Q: 届出はいつ行うのか?

 

A: 事前確定届出給与の届出には提出期限があり、「事前確定届出給与を定めた株主総会などの決議をした日から一カ月以内」、「会計期間開始の日(事業年度開始の日)から四カ月以内」のいずれか早い方と定められています。
また、新規に会社を設立した場合には、設立日から二ヶ月以内が提出期限となります。

 

Q: 事前確定届出給与の届出にあたって注意点はありますか?

 

A: 届出書と併せて提出する付表には、明確な支給日と一円単位での支給金額を記載します。
届出の提出期限を守らなかった場合だけでなく、金融機関の休日で指定日に支払うことができなくなってしまった場合や、届出後に業績が変動してしまい、全額支給できなくなるようなことがあった場合も事前確定届出給与に該当しなくなり、全額が損金不算入になってしまいます。
メリット、デメリットを理解したうえで、支給日、支給金額を検討するようにしてください。
事前確定届出給与を損金算入するには以上のように複数要件を満たす必要があります。
事前確定届出給与についてお悩み事があれば、担当又は、桐元までご相談ください。

(スタッフS)