ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方 チームワーキング 中原 淳・田中 聡 著

序章 ニッポンの「チーム」をアップデートせよ!

ここでいうチームとは、「目標を共有しつつ、相互作用をしながら、物事を達成する社会集団」のことを指します。
チームワーキングとは
1) チームメンバー全員参加で、
2) チーム全体の動きを俯瞰的に見つめ、
3) 相互の行動に配慮しながら、
目標に向けてダイナミックに変化し続けながら、成果創出をめざすチームの状態

●こんな“チームの病”に患っていませんか?
1)「目標って何だっけ?」病
2)役割分担したはずのタスクがまったくつながらない病
3)フィードバックより仲良し病
4)振り返れば、誰もいない病
5)最後はいつもリーダー巻き取り病

【成果の出るチーム】
1) チームメンバー全員が動き
2) チームの状況を俯瞰する視点を持って、
3) 共通の目標に向かってなすべき事をしながら、お互いの仕事に対し相互にフィードバックをし続けている

〈成果の出ないチーム〉
1) 一人のリーダーだけがチーム全体のことを考え、
2) リーダーが中心となってチームの目標と各自の役割を設定し、
3) それ以外のメンバーはお互いの役割や仕事の状況にはさして関心を示さず、自分に与えられた役割をただ黙々とこなしている

 

第1章なぜ、日本の職場がうまく回らなくなってきたのか

現代社会の未来を取り巻く見通しは「V:変動」「U:不確実」「C:複雑」「A:曖昧」の極みであり、現代の組織・現場・チームにも影響を及ぼしています。
組織や職場など、働く個人を取り巻く状況もまた不安定で不透明なものになっているのです。
1)「うちの会社って何の会社だったっけ?」症候群
2)「あの人、何の仕事をしてるんだっけ?」症候群
3)ひーこらひーこら働いているのに気が枯れてる症候群

【組織開発とは】
1) 組織が抱える課題を調査などによって「見える化」し、
2) そのデータを組織メンバーで共有し、「対話」を行い、
3) 自分たちの組織のあり方を自分たちで決めていくこと

組織開発には、会社全体といった大きな組織から事業部門、部門・部署、課というようにサイズや構成によってさまざまなアプローチが考えられますが、最終的には、半径3メートルから5メートルの小さな集団、「チーム」でどのようにチームワーク向上を図るか、というところに行きつきます。
どんな巨大企業でも、大切なのは「半径3メートルの世界」なのです。

 

第2章チームは常に「動き・変化」している

チームワーキングとは何か?

成果の出ないチーム 成果の出るチーム
チームをリードする人 一人のリーダー チームメンバー全員
チームの見立て 一度定めた目標に向かってまっすぐ進んでいくもの 常に想定外の変化をする、動的でダイナミックなもの
チームでの活動の捉え方 リーダーが中心となってリームの目標と各自の役割を設定し、それに従って各メンバーが着実にタスクを遂行すること チーム全員が、チームの状況を俯瞰するチーム視点を持ち、チーム視点で目標を見つめ、相互にフィードバックし合うこと
大事なポイント 「期初」のアクションが重要(目標設定、戦略策定、計画立案、役割分担など) 「期中」にもアクションし続けることが重要
(目標の見直し、「解くべき課題」の再設定、役割見直し、相互フィードバックなど)

「チームワーキング」に必要な「チームを見つめる3つの視点」

1)「チーム視点」: チームの全体像を常に捉える視点

チームがダイナミックに変化し続けていく状態を、常に俯瞰してみる視点のことです。
チームメンバー個々人が「チームの全体像」を常に捉える視点を持つことです。

2)「全員リーダー視点」:自らもリーダーたるべく当事者意識を持ってチームの活動に貢献する視点

機会があれば、全員が「リーダー」になりうるという前提で、自ら当事者意識を持ってチーム活動に貢献する視点です。

3)「動的視点」:チームを「動き続けるもの、変わり続けるもの」として捉える視点

次々と変化する環境では、チームは「動き続けるもの、変わり続けるもの」として捉える「~ing思考」を持ち、変化をとらえながら、自分自身も行動を変えていく必要があるわけです。

【チームワーキングを生み出す3つの行動原理】
1. Goal Holding:目標を握り続ける
2. Task Working:動きながら課題を探し続ける
3. Feedbacking:相互にフィードバックし続ける

 

第3章目標を設定するのではない、握り続けるのだ

ケースとデータで学ぶGoal Holding

「人の学び」を促す最もパワフルな要因は、言うまでもなく「本」ではなく、「現場における経験」です。
実践することを通じて学ぶことです。

●3つのつまずきのポイント
1)今回のメンバーがチームとしての「具体的な目標」を設定・共有しないまま、チームでの活動を進めてしまったということです。
経営者や経営陣が持つビジョンとは、多くの場合「曖昧」なものです。
それを「具体的な目標」に落とし込み、クリアにしていくのは、現場のひとびとの仕事なのです。

2)話し合いを始める段階で「どのような記念式典にしたいか、まずは各部署の代表として意見を聞かせてください」と、それぞれの立場を踏まえた問いかけをしてしまったことです。
それぞれが自分の役割範囲でしかものが見られなくなってしたったことで、この活動全体を見渡す視点が失われました。
“チーム視点”が失われてしまったのです。目標を決める際は、「お互いの意見や考えを分かり合う」対話モードから、全員が納得して「チーム全員が達成したいと思えるような目標」を「決める」議論モードに移行し、チームとしての目標を統合するプロセスが必要でした。

3)「3人の意見をつなぎ合わせると、きっと素晴らしい企画に仕上がるだろう」という安易な発想でまとめようとしてしまったことです。
失敗するチームでの仕事には、このような「意見の足し算と割り算」が頻繁にあらわれるものです。

「最初にしっかり目標設定したとしても、チームというものは、環境や状況の変化によって目標を見失っていくものです。
だからこそ、目標を常に握り続けなければならない(≒目標を全員が保持できている状態をつくらなければならない)ということです。

Goal Holdingのポイント①
「全員がコミットする」目標を設定する
最初から最後まで「チーム全員が達成したいと思えるような目標を設定していることがわかりました。

目標を設定mp「SMARTの法則」
Specific:「具体的」で
Measurable:「測定可能」で
Achievable:「達成可能」で
Related:「経営目標に関連」があり
Time-related:「期限」のある目標

サイバーエージェントのCHO常務執行役員である曽山哲人氏は、目標を考える際の要素として「IMPACTモデル」と提唱しています。
Inspiring:ワクワクするか?
Memorable:覚えられるか?
Praiseworthy:感謝されるものか?
Achievement:成果物が想像できるか?
Contribution:貢献につながるものか?
Timely:今の目標として適切か?

Goal Holdingポイント②
状況に応じて、目標に立ち返る
「成果の高いチーム」は、活動に行き詰ったとき、常にグループ目標に立ち返る機会を持っていることが明らかになりました。

Goal Holdingポイント③
(必要に応じて)目標の見直し・再設定をする

 

第4章「何が解くべき課題」なのかを、動きながら探し続ける ケースとデータで学ぶTask Working

「解くべき課題」を設定する3ステップ
1. まず「問題」が何かを正しく定義し(問題の再定義)
2. 次にその問題を構成している「課題」を洗い出し(課題の洗い出し)
3. いくつかある課題の中で、解く必要のある課題を特定する(解くべき課題の設定)

Task Workingポイント①
全員アクション:チームの全員が課題解決のために分担した役割を遂行(アクション)し続けている

チーム全員がチーム視点で最後まで分担した役割をきちんとやり切っているかどうかが、チームの成果を分ける重要な要因であると考えられる。

Task Workingポイント②
チームリフレクション:割り振られたタスクや実践した内容が課題解決のために適切であったか、チーム視点で振り返り続けている

最初に十分に議論を重ねて設定された「解くべき課題」を絶対のものとして安住し、最初から最後まで、それを変えずに活動するよりも、ターゲットを動かしながらダイナミックな課題解決を行った方が、成果が高いのです。

【アクションしないチームに多発する「社会的手抜き」】
「社会的手抜き」とは、集団で共同作業するときに、個人作業をするときよりも、仕事をサボりがちになり、生産性が低下する現象を指します。
社会的手抜きの要因

1) 評価可能性

チームに対する一人ひとりの貢献が適切に評価されない

2) 努力の不要性
たとえ自分が努力してもチームの成果に影響を与えない

3) 手抜きの同調性
他メンバーも手抜きをしているので自分も手抜きして問題ない

4) 緊張感の低下
チームにいると当事者意識が薄れ、緩んでしまう

 

第5章チームのために思ったことをはっきり伝える

ケースとデータで学ぶFeedbacking

●3つのつまずきのポイント

このケースはベテランの鷲巣がワンマンで企画を進めてしまったことが、一番の失敗原因です。
ですが、チームワーキングの視点で見ると、違った面が見えてきます。

1) メンバーの種村、荒木が、ベテランの鷲巣のプランに対して懸念する点をフィートバックすることができなかった、というところにあります。
チーム視点で企画案を改善することができませんでした。

2) チームでの課題解決プロセスが「後戻りできない地点(Point of No Return:ポイント・オブ・ノー・リターン)」まで到達してしまったという点にあります。

チーム内でお互いに言いたいことを言い合うためには、「時間」が必要です。修正し改善する時間がまだある、と分かっているからこそ、少し耳の痛いことを指摘することができるのです。
短い時間内に企画の修正プランを提案することができそうにないと考え、「このままでいいか」と放置してしまったのです。

3) チームメンバーの人間関係にあります。
種村と荒木の二人が鷲巣に率直なフィードバックを伝えられなかったのには、強引でカッとなりやすい鷲巣の性格上の問題もありますが、二人が鷲巣に引け目を感じていたところにも原因があります。

コケるチームは、徐々にフィードバックしなくなる。
フィードバックとは、「耳の痛いことも含めて、お互いに思っていること、考えていることを相手に伝えること」を示します。

Feedbackingを阻む5つの壁
1) フィードバックできない
2) フィードバックしにくい
3) フィードバックしても意味がない
4) フィードバックしても間に合わない
5) フィードバックするのが面倒くさい

Feedbackingポイント①
チームの目的を共有し続ける

Feedbackingポイント②
チームのフィードバックに関するグランドルールを設定する
1) 積極的に聴く
相手の意見に耳を傾け、積極的に聴く態度を示す。
2) いったん受容する
相手の意見をいったん受け入れる。
3) 批判厳禁
相手の意見を批判しないようにする。
4) 分からないことは質問する
モヤモヤしたことがあったとき、分からないことが生じたときは、どんなことでも質問する。
5) 肩書き厳禁
今日は職位、肩書きに関係なく、自分の本音で話す。
6) 時間厳守
全員が気持ちよく過ごすためにも、ミーティングの時間は厳守。
7) 悪者探しをしない
問題を個人のせいにするのではなく、メンバー全員の問題と考える。個人に責任をなすりつけるようなことはしない。
8) 発言はここにおいておく
今日、この場で発言したことは、日頃の人間関係には持ち込まない。
出所)中原淳『サーベイ・フィードバック入門』(PHP研究所P145より)

Feedbackingポイント③
1対1で話す機会をつくる

 

第6章すべてのひとびとに、チームを動かすスキルを!

今、我が国は、制度や仕組みで守られた「安心社会」から、個々で「信頼」を勝ち取らなければならない「信頼社会」へと急速に移行しているのだと思います。
だとすれば、信頼を獲得するためには、何が必要でしょうか。
端的に言ってしまえば、チームに貢献する具体的なアクションを、それぞれ各人がなし続けるということに尽きます。
個が個でありながあらチームを動かすスキル、「チームワーキング」の技術が必要になってくるのではないかと思います。

 

今月はこの本を選んだのは、私が参加している中尾塾で著者の中原さんが講師をしてくださり、とてもよかったです。
事例・データや図表も豊富で、自分でいったん仮説を立てて考えながら、理解していくという構成なので、学びも深まり、実践しやすい内容も多いのでお勧め致します。
お勧め度:☆☆☆☆ 星4つ
(桐元 久佳)

ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方 チームワーキング